事例
大和証券株式会社
若い世代に資産運用について考えるきっかけを。大和証券のオウンドメディア『SODATTE』
商品やサービスとの距離がまだ遠い、潜在的なユーザーとの接点づくりに効果的なコンテンツマーケティング。今回は、“子育てとお金”を切り口にさまざまな情報をお届けしている大和証券のオウンドメディア『SODATTE(そだって)』をご紹介します。
BtoCでありながら、金融商品は決して簡単に説明できる商材ではなく、今すぐ必要としていない人に耳を傾けてもらうのも難しい部分があります。また、既存顧客は 50-60代と年齢層が高く、これから顧客になり得る若年層へのリーチに課題がありました。そこで、同社のダイレクト企画部では 2016年 4月にオウンドメディアを開設。オールアバウトでは、立ち上げ段階からこちらのメディアをお手伝いしています。
『SODATTE』では、子育て世代と切っても切れない教育費の話題から、「わが家の家計診断」といった連載企画、また株主優待を上手に使っている有名人や文化人のインタビューなど、気軽に読めるコンテンツが充実しています。4年目を迎えた現在、注力している点や今後の展望について、担当する井上真紀氏と吉田一也氏に聞きました。
大和証券株式会社 ダイレクト企画部 推進企画課 次長 井上真紀氏
入社後、リテール営業を経て、2009年よりWEBやイベントを通した商品・サービス等のプロモーションを担当。
同課 主任 吉田一也氏
入社後、リテール営業を経て、2017年よりWEBチャネルの企画業務に従事、現在はプロモーションを担当。
まず、『SODATTE』立ち上げの背景をうかがえますか?
井上 大和証券の既存のお客様は、基本的に50-60代の方が多く、それより若い層にはなかなかリーチしにくいところがありました。当社にも、インターネット上で口座開設ができるコースがあるのですが、“ネット証券”と銘打っているわけではないので、どうしても敷居が高い印象がありまして……。証券会社という色もあまり出さずに、リーチしたい30-40代に興味を持っていただける、役立つ読み物で最初の接点を持ちたいと考えてオウンドメディアの開設を計画しました。
Webメディアの形式にしようというのは、最初から?
井上 そうですね。当社でのお取引は、お客様自身のペースでトレードしていただく「ダイワ・ダイレクト」コースと、当社の担当者がついて都度のアドバイスをさせていただく「ダイワ・コンサルティング」コースがあるのですが、そのうちダイレクトコースのお客様に対してアプローチを行ったり、大和証券ホームページの企画・運営など、WEBを通じたビジネス展開をしているのが、私と吉田が所属するダイレクト企画部になります。
30-40代の方はネットを使い慣れているので、おのずとWebメディアという選択肢になりました。当部署ではほかに、ネット広告なども担当しています。
子育て情報から教育費、投資まで幅広いテーマを展開
2016年4月にオープンしていますが、“子育て×お金”という軸はどのようにして導き出したのでしょうか?
井上 既存のお客様よりも年齢が低い方向け、というところから考えていきましたが、とはいえ20代だとまだ働き始めて数年で、資産運用はかなり遠いイメージかもしれないですよね。そこでまず、30-40代に絞ることになりました。
その年代で“お金”といえば、多くの方に“子育て”は欠かせないキーワードになってきます。そこで、その2つをメディアの大きな軸として設定し、当初から運営をお手伝いいただいているオールアバウトさんも交えて関連するテーマをいくつか決めていきました。4年目の現在も掲げているのは「マネーレッスン」「教育資金」「子育て」「キャリア」「家計」「我が家の家計診断」の6カテゴリですね。
「子育て」カテゴリですと、具体的な資産運用にはまったく触れていない記事もありますね。
井上 ええ。例えば先日は、東大合格マンガ『ドラゴン桜』の主人公でもあるYouTuberの桜木健二さんへのインタビューを掲載して、好評でした。
立ち上げ当初も、子育てとお金に役立つ記事を提供したからといって、すぐに当社で口座を開設いただけるような媒体になるのは難しいだろうとは思っていました。自分がいち生活者として考えても、日常的に興味があるテーマのコンテンツに触れて、すぐサービス申し込みをするわけではないので……。
たしかに、オウンドメディアで即コンバージョンにつながる成果を目指すのは、かなりハードルが高いですね。
井上 そうなんです。なので、立ち上げ2年ほどは「子育て世代に伝えたい資産運用の基礎知識」を提供しながら『SODATTE』のことも知ってもらうというスタンスで運用してきました。4年目を迎えて基礎的なテーマも一巡したため、少し幅を広げている段階が現状です。先ほどお話しした、子育て切り口の自由な記事を入れつつ、一方でもっと金融に踏み込んだ記事も増やしています。
不安をあおるのではなく、生活の中での投資を提案
効果測定指標としては、どのような数値を追っているのですか?
井上 PVと口座開設数、自然流入数をチェックしています。現在、PVは月間60万程度です。自然流入だけでなく、Web広告も行っているので、そこからの流入が大きいですね。直近の目標としては旬なコンテンツを提供して、もっと自然流入を増やしたいところです。口座開設は月間でそれなりの件数があるのですが、こちらも、もう少し増やしたいと考えています。
以前よりも、直接的なコンバージョンを見据えた記事にも注力している?
井上 意識はしています。ただ、コンテンツ企画から「PVが取れるもの」「直接のコンバージョンにつながるもの」と考えつつ、今後も率直に「ターゲットが関心を持つ企画」を起点に、ゆるやかに投資へ、かつ大和証券へ、とつなげていければと。ただ、数年経つと「『SODATTE』からどのくらい顧客化したのか」という会話も生まれますし、私たち担当者としてもそういった部分を望める記事を強化したいと思っています。
4年目に突入して、よりレベルアップした記事も増強しているのですね。企画を考える上で、重視しているポイントや方針はありますか?
井上 大きな方針として「不安をあおることはやめよう」と決めています。資産を“つくらなければいけない”という強迫的な意識からではなく、日々少しずつできることがあるんだよ、というところからアプローチしたいと思っていますね。
吉田 個々のコンテンツでも、「生活の中で」というイメージは一貫するようにしています。いわゆる資産運用のための資金が一定額ある方ではなく、仕事を通して得たお金を生活費や教育費や娯楽費に充てている、ごく一般的な子育て層の方々が読んで役立つ記事になるように意識しています。それで記事の最後に少しだけ、投資を提案するという感じです。
スマホのアクセスが約8割、UI/UXの観点でリニューアル
単に儲ける手法としてではなく、生活の中でのバランスでお金のことを考えている方々、ということですね。
吉田 そうですね。生活の中でのお金の運用というと、貯金や保険がある中で、投資もあるわけなので、アグレッシブな運用よりは、NISAやiDeCoなど入りやすい商品を中心にしています。投資先の紹介にしても、例えば今注目の「eスポーツ」を子どもとゲームという切り口で取り上げ、関連企業を提案したりしています。
3年の間にユーザー層の変化などはありましたか?
吉田 年齢層は、当初より18~44歳が60%強と過半を占めています。当初リーチしたかった若い層に多く訪れていただいていることには手応えを感じています。マネー記事を強化してきた結果か、当初より、男性からのアクセスが増えてきています。
また、この3年でスマートフォンのユーザーはぐっと増えましたね。以前はスマホで見たときのUI/UX、口座開設への動線にそこまで気を配れていなかったので、今年1月にそれらへ配慮して全面リニューアルしました。それもあって、直近の6月時点だと約8割がスマホからのアクセスでした。
井上 コンテンツの側面からは、新たに「キャリア」というカテゴリを追加しました。今、30-40代で子育て世代というと、共働き世帯の割合が増えている状況です。これまでも共働き前提の切り口の記事が人気だったりしましたし、お金とキャリアはとても密接なので、ひとつ大きなくくりとして設けようとしているところです。
現在、月に3~5本のペースで記事をアップされています。運営体制としては、井上さんと吉田さんのお二人なのですか?
井上 はい。なので、「無理をしない」のがテーマです(笑)。SDGsにも挙げられている教育の観点から、『SODATTE』での情報提供は金融リテラシー向上の一環につながっていると会社から評価を得られるようになってきたので、無理をせず長く続けられることを考えたいと思っています。
社員2人体制のオウンドメディアは「無理をしない」
たしかに、オウンドメディアの運営は、無理をして頓挫してしまうケースも少なくないので……。無理ない運営について、何か工夫したことなどはありますか?
井上 ひとつは、ルールの見直しをしました。以前は1週目と3週目に必ず更新されているようにしていたんです。でも、隔週刊と銘打っているわけでもなく、来られる方もそこまでサイクルを意識していないので、アップの準備ができた記事から更新するように変えました。月3~5本だと、訪れる度に更新されている感が出るので、今ちょうどいいペースになっていると思います。
もうひとつは、やはりパートナー企業との連携ですね。立ち上げ時からサポートいただいているオールアバウトさんを含め、現在3社のメディア・制作会社と、コンテンツ企画と制作の連携をしています。
具体的には、どのように連携・運営をしているのでしょうか?
吉田 各社さんとの定例会で挙がった企画と、私たち独自の企画を合わせて、数カ月先の計画を立てていきます。私たち企画の案に関しては、例えば女性寄りのコンテンツならそれに強い会社さんにお願いするなど、適宜こちらからご相談しています。例えば投資先として医療テクノロジーを取り上げた記事では、案はありながらどなたに聞いていいかわからなかったので、いろいろなジャンルの専門家とつながりがあるオールアバウトさんに人選を相談しました。また、先ほど挙がった「eスポーツ」のような投資×他分野の専門家を組み合わせた記事は、オールアバウトさん企画の案でした。
あと、井上さんの「これは私は見ないかな」という感覚も大きい気がします(笑)
井上 それはあるかもしれないです(笑)。自分たちが生活者として興味を持たないような切り口は、やはり共感を集めにくいのではないかなと思うので、その感覚が頼りのひとつではありますね。
最後に、今後の展望をうかがえますか?
吉田 ある程度上長から運用を任せてもらっているので、やりやすくもある一方、自分たちで日々ユーザーの要望や期待を推測しながらどんどん提案したり開拓したりしていかないと、何も進まないなと実感しています。これまでは運営に手いっぱいで、集客はWeb広告の運用しかできていなかったのですが、SEOの観点からは「投資」のキーワードでオーガニックに上位に入るコンテンツも出てきているので、今後はもう少しSEOを掘り下げたいと思います。
井上 まだ実現できていない『SODATTE』のSNSアカウント開設も、検討できればと思っています。今、ちょうどユーザーアンケートを実施中なのですが、今後は積極的に読者の方やこれから来てほしい方の意見を捉えて、運営に活かしていきたいですね。
ターゲットである30-40代は、今後、既存のお客様から相続を受け取る側にもなり得ますので、決して金融の話題が分断しているわけではなく、つながっているものだなという感覚があります。ただ、最適なアプローチの方法は違うので、様々なアプローチを試行錯誤しながら考えていきたいです。
(取材日:2019年8月16日)
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