【生活トレンド研究所レポート2014 vol.13】
「20~40代の恋愛・結婚・家庭観」に関する調査を実施①
~男性の7割、女性の6割が現在交際相手が「いない」~
~年収300万円未満の男性は恋愛にも結婚にも消極的であることが判明~
株式会社オールアバウト
株式会社オールアバウト(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長 兼 CEO:江幡哲也)が運営する「生活トレンド研究所」は、2014年第13弾のレポートとして「20~40代の恋愛・結婚・家庭観」に関するアンケート調査を実施しました。
少子高齢化が問題になり、婚姻率も一向に上昇しない昨今、結婚適齢期ともいえる20~40代の独身者の恋愛観や結婚・家庭観を、既に結婚している同年代と比較することにより、双方のインサイトについて探ってみました。調査期間は2014年9月12日(金)~2014年9月13日(土)、首都圏(1都3県)在住の20~49歳独身男女669名、既婚男女666名から有効回答を得ました。
【調査サマリー】
(1)男性の7割、女性の6割が現在交際相手がいないと回答
40代女性の4割以上が結婚に消極的
<専門家(「子育て」ガイド:河崎環氏)コメント>
これまでの日本社会に生きづらさや行き詰まりを感じている人が多い中、『人生の正解はいくつもある』ことを理解し受け入れることが本当の多様性を生むわけで、結婚しないというのも一つの道筋として存在していいのではないでしょうか。既婚者が『結婚』それ自体や配偶者について悪しざまに言い過ぎな点も、ひょっとすると経済的な理由以上に、結婚へのモチベーションを下げる心理要因かもしれません。
(2)恋愛に消極的な人ほど結婚の必要性を感じていない
理由は「一人でいることが大きなハードルでなくなってきた」!?
<専門家(「恋愛」ガイド:相沢あい氏)コメント>
恋愛をしたいと思っていない消極層は、男女共に『結婚の必要性を感じていない』、『結婚にメリットがないと思う』、『他人と暮らすのが面倒』、『子供が欲しくない』が、積極層と漠然層よりも明確に多いのが特徴的ですが、これらは『一人で生きていくことが、あまり大きなハードルだと思わなくなった』と言い換えられるのではないでしょうか。
(3)年収300万未満の男性は恋愛にも結婚にも消極的
<専門家(「子育て・夫婦関係」ガイド:おおたとしまさ氏)コメント>
『結婚したら男性が家計を支えるべき』という考えが根深いことがうかがえます。その既成概念を乗り越え、『女性が家計を支えてもいい』という価値観が男女双方に広まれば、結婚への障壁が低くなる可能性はあります。
(4)男子校出身者は異性と上手く付き合えない!?
女子校出身者は結婚にメリットを感じられない!?
<専門家(「子育て」ガイド:河崎環氏)コメント>
女子校出身者の自己完結性のようなものが育まれる背景には、『女だから』『男だから』という意識の刷り込みがなく、純粋に自分の持っているスキルや力で生きていけるという自信があるのかもしれません。
■調査概要
・調査方法 :インターネット調査
・調査期間 :2014年9月12日(金)~9月13日(土)
・調査対象 :首都圏(東京、埼玉、神奈川、千葉)の20~49歳男女
・割付 :
<独身男性>20代112名、30~40代各111名
<独身女性>20~30代各112名、40代111名
<既婚男性>20~40代 各111名
<既婚女性>20~40代 各111名
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【調査詳細】
40代女性の4割以上が結婚に消極的
首都圏在住の20~49歳の独身男女に、現在交際相手がいるかどうかを聞いたところ、男性では7割以上が、女性では6割以上が「いない」ことが明らかになりました(グラフ1)。
さらに、現在交際相手がいないという人に対して、交際相手が欲しいかどうかを聞いたところ、20~30代の男女ともに1割程度が「欲しいと思っているし好きな人もいる」と回答していました。一方で、20代・40代男性の2割、30代男性の3割が「なんとなく欲しいと思っているが特別な活動はしていない」と回答しており、この割合は女性よりも多い結果となりました。また、「特に欲しいとは思っていない」、「全く欲しくないし今後欲しくなることもないと思う」は女性が年齢が高くなるにつれて増加傾向になっており、40代女性では半数以上を占めていました(グラフ2)。
そして結婚意向についても聞いたところ、20代男女及び30代男性の4割が「いつかは結婚したいと考えている」と回答。一方で、年齢があがるにつれて「結婚はしないと思う」、「結婚はしたくない」と回答した人は増加傾向にあり、特に40代女性は42.3%が該当しました(グラフ3)。
この、「結婚はしないと思う」、「結婚はしたくない」と回答した人にその理由を聞いたところ、男性は全年代で「経済的に余裕がないから」が1位に、「結婚の必要性を感じないから」が2位になりました。女性については、20代・30代は「結婚の必要性を感じないから」が一番多く、次に「今の自由を失いたくないから」があがっており、40代女性では「他人と暮らすのが面倒だから」が上位にあがっていました(表1)。
表1:「結婚したいと思わない」、「結婚はしたくない」と思う理由
この結果に対し、All About「子育て」ガイドの河崎環氏は次のようにコメントしています。
「“非婚社会”と言われるいま、結婚を前提としない生き方を、日本社会が文化的にも社会制度上も当然の選択肢として組み込めるかどうかが問われています。これまでの日本社会に生きづらさや行き詰まりを感じている人が多い中、『人生の正解はいくつもある』ことを理解し受け入れることが本当の多様性を生むわけで、結婚しないというのも一つの道筋として存在していいのではないでしょうか。
また、日本人の謙遜の美徳なのか、既婚者が『結婚』それ自体や配偶者について悪しざまに言い過ぎな点も、ひょっとすると経済的な理由以上に、結婚へのモチベーションを下げる心理要因かもしれません。『非婚』をポジティブに捉えるのと並行して、『結婚』もまた公平にポジティブにとらえ、それを口にしてもいい。不思議な心理現象として、自身のパートナーを褒めるひとは、充足し幸せそうな印象を与え、仕事運も上がるし異性にもモテるのです。形はどうであれ『幸せな関係』を築き得るひとは、その他の幸せも惹き付ける魅力があるということでしょうか」
理由は「一人でいることが大きなハードルでなくなってきた」!?
グラフ2の「交際相手が欲しいかどうか」という質問に、「欲しいと思っているし好きな人もいる」「欲しいと思っているが好きな人はいない」と回答した層を恋愛に対する”積極層”、 「なんとなく欲しいと思っているが特別な活動はしていない」と回答した層を”漠然層” 、「特に欲しいとは思っていない」、「全く欲しくないし今後欲しくなることもないと思う」と回答した層を”消極層”とし、結婚意向を見てみると、積極層のほうが男女ともに「いつかは結婚したいと考えている」と回答した人が多く、漠然層と比べると男性で37.4ポイント、女性で41.7ポイントもの差がありました(グラフ4、5)。
また、「結婚したいと思わない」、「結婚はしたくない」と思う理由についても見てみたところ、男性の積極層と消極層の1位は「経済的に余裕がないから」ですが、漠然層の1位は「異性と出会う機会がないから」でした。女性については積極層、漠然層と1位が「異性と出会う機会がないから」、消極層は「結婚の必要性を感じていないから」が1位でした。
表2:恋愛傾向別「結婚したいと思わない」、「結婚はしたくない」と思う理由
この結果に対し、All About「恋愛」ガイドの相沢あい氏は次のようにコメントしています。
「男女・年代を問わず、結婚をしたいと思わない理由の上位に『結婚の必要性を感じていないから』というのがくるのは、『おひとりさま』が定着し、社会的な結婚への圧力が減ったことも関係しているように思います。
恋愛をしたいと思っていない消極層は、男女共に『結婚の必要性を感じていない』、『結婚にメリットがないと思う』、『他人と暮らすのが面倒』、『子供が欲しくない』が、積極層と漠然層よりも明確に多いのが特徴的ですが、これらは『一人で生きていくことが、あまり大きなハードルだと思わなくなった』と言い換えられるのではないでしょうか。
また、『出会う機会』については、男女ともに消極層の方が積極層よりも割合が多く、『出会いはあっても、結婚という形を望んでいない』ことがわかります。生活をしていくうえで欠かせない家事は、今やロボット型掃除機や乾燥機能付き洗濯機、食洗機など家電の進化により、かなり手軽に行えるようになりました。特に誰の手助けもなく暮らしていけることから、男性も若い世代になるにつれ、『結婚にメリットがない』と考えるようになったのかもしれません。女性の婚活ブーム以降、男性ネットユーザーを中心に爆発的に広がった『結婚すると男はATM扱いされる』『女と結婚しても、金が掛かるだけ』という考えが、結婚への嫌悪感を煽っているように思います。もちろん経済的理由が大きな理由ではあるのですが、結婚への憧れが削がれた状態なので、『経済的に無理をしてまで結婚する必要はない』と考える傾向があるのではないでしょうか。
パートナーがなんとなく欲しいが、何もしていない漠然層の、『結婚しない・できない理由』の第一位は、男女共に『異性と出会う機会がないから』ですが、言い換えると『好きな人ができたら、いつか結婚したい」という状況であり、出会いにガツガツしておらず、ゆったりと構えた様子がうかがえることから、一時期の婚活ブームはだいぶ落ち着いたのではないかと思います。『恋愛の延長線上にいる人」として認識しなければ、『出会っている』と認識しません。つまり、『出会いが少ない』という人は、知り合う異性の数が少ないゆえに『出会いが少ない』人と、知り合う異性の数が多くても『恋愛の延長線上にはいない』と認識する数が多いゆえに「出会いが少ない』人の2通りの属性の人がいることが考えられます」
交際相手の有無について、年収区分別(300万円未満/300万円以上500万円未満/500万円以上)で見てみると、300万円未満の男性の87.9%が交際相手が「いない」と回答しており、他の区分に比べて1割以上の差がありました(グラフ6)。一方で女性は大きな差が見られませんでした(グラフ7)。
さらに結婚意向についても見てみると、年収300万円未満の男性で「いつかは結婚したいと考えている」と回答した人は他の年収区分の人よりも1割以上低いことが明らかになりました(グラフ8)。しかし女性については逆の現象が見られており、年収500万円以上の女性は他の年収区分と比べて「結婚はしないと思う」、「結婚はしたくない」と回答した人が多い傾向にありました(グラフ9)。
「結婚したいと思わない」、「結婚はしたくない」理由について見てみると、男性の年収300万円未満は「経済的に余裕がないから」が71.0%と多く、2位の「結婚の必要性を感じていないから」と33.6ポイントも差がありました(表3)。
表3:年収区分別「結婚したいと思わない」、「結婚はしたくない」と思う理由
今回同じく調査した既婚者の年収区分を見てみると、男性の58.4%が「500万円以上」と回答していることからも(グラフ10)、“収入”が、特に男性の恋愛や結婚に対する意向に大きな影響を与えることがわかりました。
正規・非正規雇用などにより、収入の格差が問題になっている昨今、この傾向は根強く続いていくのではないかと推察されます。
この結果に対し、All About「子育て・夫婦関係」ガイドのおおたとしまさ氏は次のようにコメントしています。
「『結婚したら男性が家計を支えるべき』という価値観が結婚の障壁でしょうか。年収300万未満では男性の約9割が現在パートナーがいないと回答しています。同じく年収300万未満の女性ではそれが約7割。結婚意向については年収300万未満の男性で『すでに結婚している/結婚が決まっている』の回答者はゼロ。『いつかは結婚したいと考えている』の割合は約3割。年収300万未満の女性のうち、『すでに結婚している/結婚が決まっている』と『いつかは結婚したいと思っている』を合わせると約45%。年収300万未満では、男性のほうが結婚に消極的であることがわかります。これはなぜでしょうか。『結婚したいと思わない、あるいは結婚はしないと思う理由』を見ると、年収300万未満の男性の7割以上が『経済的に余裕がないから』と回答しています。この理由が、2位の『結婚の必要性を感じていないから』と、約35ポイントもの差を付けての1位です。さらに、男性の場合、年収300万以上500万未満においても、500万以上においても『経済的に余裕がないから』が、結婚に消極的な理由のトップ5にランクインしています。一方、年収300万未満の女性の場合、『経済的に余裕がないから』を選択したのは23.5%。理由としては4位で、結婚に消極的である理由として、経済的な理由が主たる理由ではないことがわかります。さらに年収300万以上では、結婚に消極的な理由として『経済的に余裕がないから』はトップ5のランク外でした。つまり男性の場合、経済的な理由で結婚を『諦めている』ケースが女性よりも多いと推測できます。実際、『配偶者の年収』については、男性の約半数が、『年収100万円未満』と回答しています。つまり、妻の年収が100万円未満であるという夫婦が、約半数にものぼるのです。『結婚したら男性が家計を支えるべき』という考えが根深いことがうかがえます。その既成概念を乗り越え、『女性が家計を支えてもいい』という価値観が男女双方に広まれば、高所得な女性と低所得な男性というマッチングが増える可能性はあります」
女子校出身者は結婚にメリットを感じられない!?
最後に、「結婚したいと思わない」、「結婚はしたくない」と思う理由について出身高校種別(共学・男子校・女子校)で見てみたところ、男子校・共学でもほぼ男子クラスだった男性は共学出身の男性と比べて「異性と出会う機会がないから」、「異性とうまく付き合えないから」といった点でポイントが高い結果となりました。また、女子校・共学でもほぼ女子クラスだった女性は共学出身の女性とくらべて「結婚にメリットがないと思うから」という点でポイントが高い結果となりました(表4)。
この結果に対し、自身も女子校出身である河崎氏は次のようにコメントしています。
「価値観にどれだけの違いが生まれるのか?結婚観では顕著なコントラストが出た結果となりました。『結婚したいと思わない』『結婚しない』理由として、男子校出身者が『異性とうまく付き合えない』と、自分の側のコミュニケーション力に不安を覚えているのに対し、女子校出身者は結婚自体にメリットがないと主体的に認識しています。この、女子校出身者の自己完結性のようなものが育まれる背景には、『女だから』『男だから』という意識の刷り込みがなく、純粋に自分の持っているスキルや力で生きていけるという自信があるのかもしれません。単純に『女性が強くなった』などと手垢のついた結論をするのではなく、なぜ自立した女性が自己完結的になるのか、時代性によるものか、またはこの傾向は普遍的なものなのか、考えてみるのも面白そうです」
また、男子校出身のおおた氏も次のようにコメントしています。
「男子校出身者が必要以上に女性に対しての苦手意識をもっていることがわかります。結婚に消極的である理由を出身高校別に見てみましょう。『男子校・ほぼ男子クラス』出身の男性は、37.7%が『異性と出会う機会がないから』、24.5%が『異性とうまく付き合えないから』と回答しています。『共学出身者』の男性の場合、これがそれぞれ28.0%と18.2%です。ただし、独身者の『パートナーがいる率』で比較すると、『男子校・ほぼ男子クラス』と『共学出身者』の差はほとんどありません。男子校出身者でも共学出身者とほぼ同じ確率でカノジョはできているのです。このことから、『男子校・ほぼ男子クラス』出身者で結婚していない男性は、異性とのコミュニケーションに必要以上に苦手意識をもち、女性とあまり関わらない生活を送ってしまっているケースが少なからずあると考えられます。『男子校・ほぼ男子クラス』出身者にとって、女性とのコミュニケーションに対する苦手意識を払拭することで、結婚への道がひらける可能性はあります」
■調査監修者プロフィール
All About「恋愛」ガイド 相沢 あい
恋愛コラムニスト。高校時代よりライター活動を開始。早稲田大学人間科学部にて、心理学、社会学、生物学を学ぶ。2004年、ミスインターナショナルファイナリストを機に、レポーターやレースクイーンとして活動しながら、メディア制作に携わる。現在は恋愛コラム執筆のほか、ライター業、広告系クリエーター業を行っている。
All About「子育て」ガイド 河崎 環
コラムニスト。子育て系人気サイト運営・執筆後、教育・家族問題、父親の育児参加、世界の子育て文化から商品デザイン・書籍評論まで多彩な執筆を続けており、エッセイや子育て相談にも定評がある。家族とともに欧州2ヵ国の駐在経験。
All About「子育て・夫婦関係」ガイド おおた としまさ
「子どもが『パパ~!』っていつでも抱きついてくれる期間なんてほんの数年。今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」と株式会社リクルートを脱サラ。育児・教育分野を中心に活動するジャーナリストとして執筆や講演活動、メディア出演を行う傍ら、パパのための相談サイト「パパの悩み相談横丁」を運営する。
■「生活トレンド研究所」について
「生活者のトレンドと未来をひも解くマーケティング・チャネル」であることをミッションに掲げ、総合情報サイト「All About」で活躍する住宅、マネー、健康、グルメ、一般消費財等、様々な領域における専門家(=ガイド)が研究員となって、企業と生活者がより良い関係性を構築するための調査、市場分析を行なっていきます。その分野における高い専門性はもちろんのこと、生活者・実務家としての考えや想いも兼ね備えた「All Aboutガイド」ならではの分析・考察を重ねることで、表面的な定量データでは捉えられない新たな潮流や課題を浮き彫りにしていきます。
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